クセの種類と原因
クセの原因は大きく分けて3つあります。原因が違うのであれば、その対処法も変わってきます。
くせ毛は①波状毛というシスチン結合(S-S結合)が強く影響して起こるクセ
②うねり毛(捻転毛)という水素結合が強く影響して起こるクセ
③縮毛というシスチン結合と水素結合の両者が強く影響して起こるくせに大別されます。
毛髪診断では、ドライとウェットのクセの状態で見分けることができます。具体的にはシスチン結合のクセの特徴はドライでもウェットでもウェーブが変わらない、水素結合のクセの特徴はドライとウェットでは形がかなり異なることで区別できます。そして水素結合のクセの中で、ドライのクセがウェットで直毛になる毛をうねり毛、波状毛になる毛を縮毛といいます。
直毛
波状毛
うねり毛(捻転毛)
連球毛
縮毛
波状毛の原因と対策
髪は毛乳頭で作られ、成長とともに毛根を登っていきます。
毛球部で生まれたケラチンはS-S結合が完全に切断された「完全還元状態」であり、毛穴から入る空気に触れることで一浴式パーマのように酸化されて硬い髪に生まれ変わります。
空気に触れてS-S結合の熟成された髪になる場所のことを「固定部」と読んでいます。この固定部はまっすぐであれば直毛になるのに対し、図のように毛穴の形が曲がっている場合はS-S結合が曲がった状態で固定されるのでクセとなります。このようにS-S結合のボタンを掛け違えたクセのことを波状毛といい、強い還元剤で十分に軟化して酸化でまっすぐ固定すればストレートになります。
ただし、撥水性の波状毛は、薬剤の浸透速度が著しく遅いために、前処理で薬剤の浸透をあげておいてからストレート材で軟化する「ブースター軟化法」を選択します。
うねり毛(捻転毛)の原因と対策
うねり毛は固定部の形が直毛と同じでまっすぐであるのに、大気に触れて乾燥すると直毛が曲がってクセになるタイプです。
細毛の乾燥毛に多く見られるクセで、湿らすと毛管の固定部の形である直毛を思い出すものの、乾くとクセになる異常毛です。
うねり毛の原因は、図のように周りはオルトコルテックスの特徴である細げ・乾燥毛を示しながら、髪の内部に硬い芯のようなパラコルテックス部分が混在することにあります。
うねり毛のオルトコルテックス、パラコルテックスは縮毛や羊毛に見られる顕著な構造のものではなく、右寄り、左寄りのように中間的な存在です。
このような局地的なコルテックスのムラが生じる原因は毛乳頭における血液量のムラが原因と考えられ、血液が多く供給されたコルテックスはパラよりに、血液量が不足してできたコルテックスはオルトよりに熟成されるため、例えば子供のころ直毛であっても、40代で毛乳頭に流れ込む血液の状態が悪化するとハチの上にうねりが生じたり、妊婦など貧血状態が続くとうねり毛になるなど、頭皮の血液の流れが直接クセに影響します。
うねり毛をストレートにするために強いS1タイプのチオグリコール酸で軟化しても、芯の部分のS2環境にあるS-S結合が均等に軟化されないために、ダメージでぼろぼろになりながらもクセは残るという問題が生じます。うねり毛には芯の部分のS2環境にあるS-S結合を前処理でS2タイプのアルカリシステアミンを用いて切断し、次にS1タイプのチオグリコール酸で本軟化する「ダブル軟化法」を選択します。
縮毛の原因と対策
縮毛は、波状毛の特徴である固定部の曲がりと、うねり毛の特徴である局地的なパラおよびオルトコルテックスのムラの両方を持っているクセです。特に後者のコルテックスのムラは毛乳頭における血液量のムラが原因で起こると前述しましたが、縮毛の場合はオルトとパラが図のようにバイラテラル構造という2分割になっている事が特徴です。
縮毛の髪は毛根が頭皮に対して横向きに寝ており、かつ毛乳頭へ流れ込む血液が少なく、偏在しているためにオルト・パラと極端にコルテックスが2分割されると推察されます。
うねり毛と同様に縮毛を均等に軟化することは難しく、縮毛矯正剤のようにアルカリ度とpHを下げ、膨潤を抑えながらゆっくり軟化する方法を選択しますが、それでも均等な軟化に失敗してストレートに出来ないことが多いため。「ブースター軟化法」と「ダブル還元法」を組み合わせた方法を選択します。
以上、ちょっと難しい話でしたがなんでくせ毛になるんだろう?ていう疑問が少し解決しましたね。
お客様のクセのタイプを見極め、ダメージレベルも考慮しながら既矯正部には酸性領域で還元可能な薬剤を併用しながらダメージを抑えつつ高度に複雑な施術を当店では行っております。
当店の技術がクセでお悩みのお客様の助けとなれることを願っております。
ちなみに、よくあるご要望で毛先を丸くしたい、ふわっとしたい、というのがございますが、矯正はまっすぐするのが目的ですので、パーマの行程が別途必要となります。